源泉徴収票を電子交付するとは?

はじめに源泉徴収票とは?

「源泉徴収票」とは、1年間に会社から支払われた給与やボーナス(賞与)、手当などの金額と、そのなかから納めた所得税の金額が記載されている書類のことです。会社は、従業員に支払う金額から所得税を計算し、その分を給与から差し引いて、国に納税しています。これを源泉徴収といい、税金の納付漏れや徴収漏れを防ぐため、会社が個人に代わって納税するように設けられている制度です。「源泉徴収票」を見ると、自分が会社からいくら支払われて、いくら所得税を納めたのかがわかります。

■ 源泉徴収票の見るべき項目

〈 支払金額 〉
支払金額とは、所得税を徴収する前の給与や賞与、役職手当や資格手当といった固定手当、残業代やインセンティブといった変動手当などを含めた、会社が従業員に支払った1年間の総支給額が記載されています。ただし、通勤手当や旅費・出張費など、非課税になる手当は含まれません。

〈 給与所得控除後の金額 〉
給与所得控除後の金額は、支払金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額が記載されています。給与所得控除は、従業員にも経費があるという観点から、一定額を控除することで払うべき税金を抑えてくれる制度です。「給与所得控除額」は、国税庁が支払金額に応じて定めています。
● 参考: 国税庁Webサイト No.1410 給与所得控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

〈 所得控除の額の合計額 〉
所得控除の額の合計額は「給与所得控除」以外に控除される金額の合計額です。
どの控除が適用されるかは人によって異なり、適用される控除の合計額が記載されます。
所得控除の種類は、以下のとおりです。
1. 雑損控除 / 2. 医療費控除 / 3. 社会保険料控除 / 4. 小規模企業共済等掛金控除 / 5. 生命保険料控除 / 6. 地震保険料控除 / 7. 寄附金控除 / 8. 障害者控除 / 9. 寡婦控除 / 10. ひとり親控除 / 11. 勤労学生控除 / 12. 配偶者控除 / 13. 配偶者特別控除 / 14. 扶養控除 / 15. 基礎控除
● 参考: 国税庁Webサイト No.1100 所得控除のあらまし https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm

〈 源泉徴収税額 〉
源泉徴収税額は、1年間に納めた所得税の金額です。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いたものに「課税所得額に応じて決定される所得税率」をかけて算出されます。所得税率は、課税される所得額に応じて決定します。
● 参考: 国税庁Webサイト No.2260 所得税の税率 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

 

■ 源泉徴収票はどのようなときに使うの?

源泉徴収票は、収入や納税額の証明になるものですが、具体的にはどのようなときに使うのか、それぞれ詳しく説明していきます。

1: 転職するとき
退職する会社から源泉徴収票が発行され、転職先に源泉徴収票を提出する必要があります。転職先で年末調整をしてもらうときに、前の職場の源泉徴収額と合算する必要があるためです。転職する際には、源泉徴収票は転職先へ必ず提出しなければならない書類ですので、転職する予定のある方は忘れないようにしましょう。

2: 確定申告するとき
一般的に、会社に勤務している場合は会社で年末調整を行ってもらえます。しかし、年収が2,000万円を超える場合や、副業による所得が20万円を超える場合、退職して会社に勤務していない場合などは、自身で確定申告を行わなければなりません。確定申告を行うときに、源泉徴収票が必要です。

3: 収入の証明が必要なとき
収入の証明が必要なときに、源泉徴収票は収入証明書類として利用できます。金融機関から融資を受けるときや、賃貸契約をするとき、子どもを保育園に入園させるときなどに、収入証明書類の提出を求められます。収入証明書として有効な書類にはさまざまなものがありますが、源泉徴収票もそのうちの1つです。収入証明が必要なときのためにも、源泉徴収票はしっかり保管しておきましょう。

 

源泉徴収票の電子化とは?

源泉徴収票等は書面で交付するのが原則ですが、一定の要件を満たした場合、電子メール等での方法で電子交付することができます。給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)について解説します。

■ 源泉徴収票等を電子交付するための必要な要件

〈 要件1: 事前承諾を得ていること 〉
受給者等に対し、あらかじめ、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、電磁的方法又は書面で承諾を得ること。
(所令352の41、3531、3561、措令4の215、25の10の103、26の1713)

なお、「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」について、「支払者が定める期限までに承諾に係る回答がない時は承諾があったものとみなす」旨の通知をあらかじめ受給者に行い、上記期限までに受給者からの回答がなかった場合には、承諾を得たものとみなされます(所規95の22)。

【 事前承諾 】

● 質問:
源泉徴収票等を電子交付するためには、あらかじめ受給者等に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、電磁的方法又は書面による承諾を得なければならないとされているが、具体的にどのように承諾を得ればいいのか。

  • 紙でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当するデータを保存する必要があります。
  • あくまでデータでやりとりしたものが対象であり、紙でやりとりしたものをデータ化しなければならない訳ではありません。
  • 受け取った場合だけでなく、送った場合にも保存する必要があります。

● 回答:
給者等から電子交付に関する承諾を得る場合の記載事項や書式等について、法令上定めはありませんが、次のような事項を受給者等に対して電磁的方法により示し、「電子交付について承諾する旨、承諾日、受給者等の氏名」などを入力してもらうことによって、承諾を得ることが考えられます。 (注)令和5年度税制改正において、「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」については、支払者が受給者から電子交付の承諾を得ようとする際に、「支払者が定める期限までに承諾に係る回答がない時は承諾があったものとみなす」旨の通知をあらかじめ受給者に行い、上記期限までに受給者からの回答がなかった場合には、電子交付の承諾があったものとみなされることとなりました(所規95の22)。

  1. 電子交付する書類の名称(給与所得の源泉徴収票、給与等の支払明細書の別等)
  2. 電磁的方法の種類やその具体的な方法
    ● 電子メールにより交付する場合: 電子メールにより送信する旨、電子メールのアドレス等
    ● 社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧に供する場合: 給与所得の源泉徴収票等データを閲覧に供する旨、給与所得の源泉徴収票等データを掲載するホームページアドレスや閲覧方法等
    ● 磁気媒体等により交付する場合: 交付する媒体の種類等
  3. 受信者ファイルへの記録方法(XML形式、PDF形式、暗号化して受信者ファイルに記録する旨及びその復号化方法等)
  4. 交付予定日(毎年○月○日までに交付、給与支給日に交付等)
  5. 交付開始日
  6. その他参考となる事項

また、上記の事項を記載した書面を受給者等に交付し、その書面に「電子交付について承諾する旨、承諾日、受給者氏名」などを記載してもらう方法なども考えられます。

 

〈 要件2: 電子交付の方法が一定の要件を満たすこと 〉
次の要件を満たした形で電子交付をする必要があります。
イ)パソコン等で表示や書面への出力ができること
ロ)受給者等に対し、受信者ファイルに記録(電子交付)する(した)旨を通知すること
ただし、給与所得の源泉徴収票等データを、受給者等の使用するパソコン等に直接送信する場合や光ディスク等の磁気媒体等に記録して交付する場合を除きます。

なお、受給者が希望する場合は、書面で交付する必要があります。
また、一旦承諾を得た場合でも、書面交付への変更を希望した場合には、それ以後は書面で交付しなければなりません。

● 参考:国税庁Webサイト 給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/denshikofu-qa/answer.htm

 

源泉徴収票を電子化するメリット

源泉徴収票は、収入や納税額の証明になるものですが、具体的にはどのようなときに使うのか、それぞれ詳しく説明していきます。

● メリット 1: コスト削減につながる
ペーパーレスになり、紙や印刷代、封入・郵送代などに費やしていた時間やコストを削減できます。
封入や切手貼り、投函作業などの作業も簡略化・短縮できることで業務の手間も削減でき、その業務に費やしていた人件費も軽減できます。

● メリット 2: 保管や紛失のリスクが減る
電子化することで、紙で管理するよりも圧倒的に保管しやすく、紛失のリスクがないのは電子化の大きなメリットです。

● メリット 3: 人的なミスが防げる
人の手でデータを管理や作業をしていると、気をつけていても配布ミスや給与データの転記ミスなどが発生してしまう場合もあります。源泉徴収票を電子化を行えば、計算ミスや入力ミス、封入ミスや配送ミスといった人為的なミスを削減でき、システムによる自動計算が行われるため人的なミスを防げます。

 

源泉徴収票を電子交付することで手間が一気に短縮されるだけではなく、人的ミスも抑えられ、よりスムーズかつ正確に行うことができ、業務を大幅に効率化する事ができます。ぜひこの機会に電子化を検討してみてはいかがでしょうか。電子化についてのご相談やご質問・お問い合わせは、ぜひ福島リコピーへお気軽にご連絡くださいますようお願いいたします。