目上の人や取引先に「ありがとうございます」は使っていい言葉?
ビジネスでも、プライベートでもよく使われる「ありがとうございます」というお礼の言葉。
丁寧な言い回しとして使われていますが、敬語として正しいのか、もっと丁寧な言い換えはあるのか。また「ありがとうございました」と「ありがとうございます」はどんな違いがあるのでしょうか。
「ありがとうございます」について、敬語として正しいかを説明するとともに、言葉の意味や使い分け、注意点や言い換え表現などをご紹介します。
「ありがとうございます」の意味・語源
「ありがとうございます」は、感謝の気持ちを表す言葉「ありがとう」を丁寧にした敬語表現です。
感謝するという意味の形容詞「ありがたい」と、補助動詞「ある」の丁寧語「ございます」から成り立つ表現です。「ありがたい」の語源は、仏教の「有り難し」に由来があるとされております。
人からの好意に対して有ることが稀である、滅多に無いことを感謝する言葉として「有り難し」「有り難い」と使われるようになったといわれており、めったにないことに感謝を表すときに使われるようになりました。
「ありがとう」は敬語ではありませんが、丁寧語の「ございます」がつくことで正しい敬語となります。目上の人や取引先など、ビジネスシーンで使って問題のない丁寧語の言葉です。目上の人や取引先に感謝を伝える言葉として、口語でも書き言葉でも使われます。
「ありがとうございます」のより丁寧な表現
「ありがとうございます」は、目上の人や取引先などビジネスシーンで使って問題のない丁寧語ですが 「ありがとうございます」と言うだけでは、場合によって、敬意が足りないと感じる相手もいらっしゃるかもしれません。
より丁寧に表現したい、より感謝の気持ちを込めたいという場合は「ありがとうございます」の頭に「本当に」「誠に」をつけます。
● より丁寧な「ありがとうございます」の表現
ありがとうございます
↓
本当に ありがとうございます
↓
誠に ありがとうございます
そのほかに「大変ありがとうございます」という表現があります。この「大変」は、程度がはなはだしいさまを意味する程度副詞です。「大変ありがとうございます」と「大変」をつけることで、感謝の気持ちを強調していますので、敬語として間違いではありません。しかし、大変という言葉には「苦労などが並々でないこと」という意味もあり、こちらの意味からネガティブなイメージとして違和感を与える可能性があります。
違和感なく感謝の気持ちを受け取ってもらえるように「誠に」「本当に」を使う方がよいと思います。ただし「本当にありがとうございます」は、ややカジュアルな表現になるため、目上の人や取引先などには「誠にありがとうございます」が最適です。
「ありがとうございます」の言い換え表現は?
「ありがとうございます」は使い勝手がよく、何度も使いたくなる表現ですが、連続で「ありがとうございます」と言い続けていると、だんだんと感謝の気持ちが軽い印象になりかねません。
感謝の気持ちを表す言い換えの言葉はたくさんありますので、使用に見合ったシチュエーションで使い分けることをおすすめします。
●「ありがとうございます」の言い換え表現
感謝申し上げます / 感謝いたしております
深謝申し上げます / 感謝の念に堪えません
感謝の気持ちでいっぱいです / お礼の言葉もございません
心より御礼申し上げます / 衷心より御礼申し上げます
恐れ入ります / 痛み入ります
恐縮に存じます / ありがたく存じます
相手との関係性で口語ではかしこまり過ぎた印象になってしまうこともありますので、状況に応じて使い分けることや、メールなどの書き言葉で使い分けをされることをおすすめします。
「ありがとうございました」はNG!? 間違い敬語?
過去の出来事に対して、後日「先日は打ち合わせのお時間をいただき、ありがとうございました」など「ありがとうございました」を使うケースがあります。過去の出来事に対して「ありがとうございます」を「ありがとうございました」とした表現で、間違いではありませんが、間違い敬語だという考え方もありますので注意が必要です。
間違い敬語といわれる理由は、以下のとおりです。
- 過去の出来事のみに限定された印象のため失礼になる、という考え方
- 語尾の「ございました」は完了・終了を意味するため、今後も継続的に取引や関係性を続けたい相手に対して使うには適切ではない、という考え方
- 「ありがとうございます」の言い換えの言葉が過去形で使われないため「ありがとうございます」のみ過去形にすることに違和感がある、という考え方。「先日は打ち合わせのお時間をいただき、感謝申し上げます」と言う場合「感謝申し上げます」を「感謝申し上げました」と過去形にしていません。
「ありがとうございました」は間違い敬語ではありませんが、このような考え方もあることを踏まえ、お礼や感謝は過去・現在関係なく「ありがとうございました」に統一するのが適切という考え方があります。
ケースバイケースで使い分けされてよいと思いますが、メールやお礼状などの書き言葉は「ありがとうございます」にされることをおすすめします。
「有難う御座います / ありがとうございます」どちらが正しい?
「ありがとうございます」は、漢字で「有難う御座います」と表記する人もいます。表記が平仮名か漢字か、どちらが正しいのでしょうか。
表記のルールはなく漢字で表記しても、平仮名で表記しても、どちらも間違いではありませんが、どちらかというと、現代では「ありがとうございます」と平仮名表記が一般的です。漢字表記の「有難う御座います」の文字からイメージされる印象は、読みにくく堅苦しい、違和感があるなど好まれない傾向があります。
感謝を伝える相手にそのような印象を与えてまで漢字表記にするのは本末転倒です。平仮名表記で「ありがとうございます」とした方が読みやすく、感謝の気持ちも伝わりやすいと思います。
「ありがとうございます」は、正しい敬語です。目上の人や取引先に感謝を伝えるための言葉として適切です。
「ありがとうございます」には、言い換え表現が多くあります。同じ感謝の気持ちを伝える場面でも相手との関係性で使う表現は異なるため、状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
ぜひ、相手やシーンに合わせた表現を使いこなし、心を込めた感謝の気持ちを届けてください。