ビジネスチャンスを広げる最新技術、「VR」の可能性と未来像

技術革新によって、近未来の世界が現実に

最近よく耳にするようになった「VR」は、「Virtual Reality(バーチャル・リアリティ)」の頭文字をとった略語で、日本語では「仮想現実」と訳されます。

顔に専用ゴーグルを装着した様子がさまざまなメディアで紹介され、近未来的な印象をお持ちになった方もいるのではないでしょうか。ちょうど今月(6月)初旬、Apple社からVR/ARゴーグル「Vision Pro」が満を持して発表され、大きな話題になりました。

この専用ゴーグルを装着すると視界が360度覆われ、立体的な映像によって限りなく現実に近い体験が得られます。例えば、さまざまな映像コンテンツを視聴したり、映像の中を自由に歩きまわったりできるほか、映像の中の物に触れたり、自由に動かすことも可能です。このような「手段」や「技術」のことを総称してVRと呼んでいます。

このVR技術は、近年の技術革新の賜であることに間違いありませんが、その歴史をひも解くと半世紀以上も前の1960年代までさかのぼります。  研究開発が始まった当初は2D映像でしたが、その後、家庭用ゲーム機の普及によりVR技術はますます進化し、多くの人がVR技術を享受できるようになりました。特に、各メーカーからVR体験ができる家庭用ゲーム機の発売が相次いだ2016年は「VR元年」といわれています。

現実世界と仮想世界を行き来する多様な技術

VRのほかにも「AR」や「3D」という言葉を聞いたことがあると思いますが、それらとの違いについて、ここで簡単に触れておきたいと思います。

ARは、「Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ)」の頭文字をとった略語で、日本語では「拡張現実」と訳されます。実在する空間に文字や映像などの視覚情報を重ねて表示させる技術で、例えば観光地などでスマートフォンをかざすとキャラクターが現れるコンテンツのことです。つまり、ARは現実世界に視覚情報を表示させるのに対し、VRは仮想世界を現実のように感じさせる手法といえるでしょう。  3Dは、映画などにも使われる技術で、ご存じの方も多いと思います。左右2台のカメラで撮影した3D映像を専用のメガネで見ると立体的に見える仕組みです。立体的という部分ではVRと共通していますが、視界が360度覆われるVRは映像そのものに没入できるなど3Dとは一線を画しています。

さまざまなビジネスで活用が始まるVR技術

先に触れたように、家庭用ゲーム機に端を発するVR技術は近年、ゲームだけでなくさまざまなビジネスに活用されるようになりました。ここではほんの一例を紹介します。

エンターテイメント

音楽ライブや観劇などではVR技術ならではの没入感・臨場感が遺憾なく発揮されることから、エンターテイメント業界との親和性の高さが注目されています。

スポーツ

まるでスタジアムにいるかのような、プレイヤー(選手)の視点でスポーツ観戦ができることから、さまざまな競技でVR観戦が検討されています。一方で、選手自身がトレーニングにVR技術を導入するケースも増えています。

観光

動画配信チャンネルでVR技術を活用した動画コンテンツは、その没入感・臨場感の高さから、国内だけでなく海外の旅行者をターゲットにした魅力発信にも一役買っています。

教育・医療

場所を問わずどこでも同じ授業が受けられる教育分野への導入、また、遠隔地から手術や治療が可能になる医療分野への導入が期待されています。

企業広告

VR技術によって体験型の広告発信が可能になりました。実際に商品に触れたり、操作することで商品・サービスの魅力が伝えやすくなります。結果として購買機会を増やせるなど、新たな広告手法として期待されています。

 

さて、VRはゲームや動画、エンターテイメント分野の技術と思われがちですが、教育や医療、観光や企業広告の事例を見てもわかる通り、業種・業界を問わずさまざまなビジネスでの活用が想定されるなど、すそ野の広い技術といえそうです。

新たな技術がもたらす世の中の変化に着目し、その中で自社の強みをどう活かすかをつねに考えながら、新たなビジネスの創造につなげたいものです。