紙から電子データへ。改正電子帳簿保存法の中身

帳簿・書類の保存は電子データで

「電子帳簿保存法」とは読んで字のごとく、国税に関係する帳簿・書類の電子保存を認める法律です。そもそも国税に関する帳簿・書類は「紙」で保存する決まりでしたが、保存スペースの確保や保存にかかるコストなどの問題から、時代の流れにあわせて「電子データ」での保存が認められるようになりました。
この電子帳簿保存法の施行は、およそ25年前の1998年までさかのぼります。その間、幾度かの改正が行われてきましたが、直近の2022年の改正では「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分で大幅な改正が行われました。

電子帳簿等保存とは

自社で電子データで作成した帳簿・書類を電子的に保存する。

スキャナ保存とは

取引先から受け取った請求書や領収書、自社で作成した紙の書類をスキャンして電子的に保存する。

電子取引とは

取引先とメールなどでやりとりした添付書類などの電子データ(pdfなど)を電子的に保存する。この中で「電子取引」は2023年12月31日まで猶予期間が設けられ、2024年1月から本格スタートします。大企業・中小企業の別なく、すべての事業者(個人事業主も含む)が対応しなければなりません。

電子データで保存すべき帳簿・書類

日々の企業活動の中で、取引先等とやりとりする書類は多岐に渡ります。その中で「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分に分けた主な帳簿・書類は以下の通りです。

電子帳簿等保存

スキャナ保存

電子取引

帳簿・書類を電子保存するメリット

先に触れたように、そもそも帳簿の保存方法が紙から電子データへ移行したのは、保存スペースや保存コストなどが発端でした。帳簿・書類の電子化によってどんなメリットがあるのか、さらに詳しく見ていきます。

省スペース化が図れる

国税関係の帳簿や取引に必要な書類は、一般的に7年間の保管が義務付けられています。従来のように紙ベースの帳簿・書類を保管するとなると、会社の規模にもよりますが、ある程度のスペースが必要です。一方、物理的な保管場所を必要としない電子保存は、極めて効率のよい方法といえるでしょう。

経費コストを削減できる

省スペース化のメリットとも関連しますが、電子保存によって帳簿・書類を保管するファイル、ファイルを保管するキャビネットが要らなくなり、有料の書類保管サービスなどを利用する必要もなくなります。また、帳簿・書類をプリントアウトするときの紙代やインク代、発送するときの郵送費も必要ありません。帳簿・書類をファイリングしたり管理する人件費も削減できます。

業務の効率化が図れる

これまで帳簿・書類の保管には、種別や項目ごとに分類してファイリングしなければなりませんでした。担当者でなくても目的のファイルが見つかるように、一定のルールに即して規則正しく整理・保管する必要がありました。
一方、帳簿・書類が電子化されると、目的のデータを探すときはパソコン等の画面上で事足ります。日付や内容などで手軽に検索できるので、業務は大幅に効率化できます。また、保管期限を過ぎて不要になったデータの破棄も簡単です。

セキュリティが強化される

紙ベースの帳簿・書類は、保管場所に入室できれば第三者でも閲覧可能で、常に改ざんや紛失のリスクを負っています。一方、電子データであればロックをかけることで第三者に見られないようにできるほか、操作履歴が残るシステムを導入すれば改ざんを防止でき、ファイルの上書きを阻止できます。さらに、電子データをクラウド上に保管すれば、データの破損や紛失を回避することができます。

さて、電子帳簿保存法の改正により、電子取引についてはすべての事業者で電子保存が義務化されるなど、企業活動におけるデジタル化の流れは今後ますます加速するでしょう。こうした時代の流れに対応するために、事務・経理のあり方を今一度見直す必要がありそうです。