「わかりました」はビジネスシーンで使っても良い言葉?
相手の言っていることや物事に対して、理解した、納得したと伝える際に「わかりました」といいますが、目上の人に対して使っても良いのか迷ったことはありませんか?何気なく使っている「わかりました」は、正しい敬語なのでしょうか?ビジネスシーンでの適切な敬語表現について解説します。
■「わかりました」は敬語?
敬語は大きくわけて「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の3種類があります。文化庁の「敬語の指針」では、敬語の働きと適切な使い方をより深く理解するために、謙譲語と丁寧語を細分化し「尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語」の5種類があります。
参考:文化庁の「敬語の指針」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf
「わかりました」は敬語ではない、という考えがありますが正しい敬語です。「わかりました」は、動詞の「わかる」に、助動詞の「ます」を過去形にした「ました」を組みあわせた言葉で丁寧語になります。
丁寧語とは、言い方を丁寧にすることによって相手に敬意を表す言葉で、日常会話において広く使用されている敬語です。しかし、丁寧語は尊敬語や謙譲語ほど相手への敬意を大きく表せないという理由から、「わかりました」をビジネスシーンで使用することは適切ではありません。上司や顧客・取引先には、丁寧語ではない言い換え表現を使うようにしましょう。
■「わかりました」の言い換え表現
相手の言っていることや物事に対して、理解した、納得したと伝える言葉「わかりました」の言い換え表現はいくつかあります。ビジネスシーンで使う場合は、敬意を明確に表現した謙譲語の「承知いたしました」、「承りました」、「かしこまりました」の3つが最適です。それぞれの言い換え表現について解説します。
● 承知いたしました
「承知」という言葉は、以下の意味があります。
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- 事情などを知ること。また、知っていること。わかっていること。「無理を—でお願いする」「君の言うことなど百も—だ」「事の経緯を—しておきたい」
- 依頼・要求などを聞き入れること。承諾。「申し出の件、確かに—した」
- 相手の事情などを理解して許すこと。多く下に打消しの語を伴って用いる。「この次からは—しないぞ」 引用元: goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%89%BF%E7%9F%A5/
「承知いたしました」は、「承知」+「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語の「ます」の過去形「ました」から構成された敬語で、謙譲語の言い換え表現です。上司や取引先に「承知いたしました」と使うことで、上司や取引先からの「意見・希望・要求などを、聞いて受け入れる」と伝えることができます。
また、語尾が異なる「承知しました」という表現は、「承知」+「する」の丁寧語「します」を過去形にした「しました」から構成された敬語で丁寧語の言い換え表現です。謙譲語の「承知いたしました」と 丁寧語の「承知しました」の使い分けは、誰に対して敬意を表現しているのかによって異なります。顧客や取引先には、謙譲語の「承知いたしました」を使いましょう。直属の上司には丁寧語の「承知しました」を使い、直属の上司以外の上司には謙譲語の「承知いたしました」を使うことをおすすめします。
● 承りました
「承りました」の「承る」という言葉は、以下の意味があります。
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- 「受ける」の謙譲語。謹んで受ける。お受けする。「大役を—・る」
- 「聞く」の謙譲語。謹んで聞く。拝聴する。「ありがたいお話を—・りました」
- 「伝え聞く」の謙譲語。「—・るところによりますと」
- 引き受ける意の謙譲語。謹んでお引き受けする。「御用命—・る」 引用元: goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%89%BF%E3%82%8B/
「承りました」は、謙譲語の「承る」+丁寧語の「ます」の過去形「ました」から構成された敬語での言い換え表現です。依頼・要求など相手の言葉を謹んで聞く、引き受けるという意味から、しっかり伝え聞く印象があり、目上の人に使って良い敬語表現です。電話対応にて依頼・要求など伝言を受け取ったときに「○○が承りました」と使用するイメージもあり、顧客や取引先に対して使用できる言葉です。
● かしこまりました
「承知いたしました」や「承りました」より丁寧な言い換え表現は「かしこまりました」です。
「かしこまりました」は、「かしこまる」+丁寧語の「ます」の過去形「ました」から構成された敬語です。
「かしこまる」という言葉は、以下の意味があります。
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- 身分の高い人、目上の人の前などで、おそれ敬う気持ちを表して謹んだ態度をとる。「陛下の御前に—・る」「—・ってあいさつする」
- 謹みの気持ちを表し堅苦しく姿勢を正して座る。正座する。「—・っていないで、ひざをお崩しなさい」
- 命令・依頼などを謹んで承る意を表す。承りました。「はい、—・りました」
- 堅苦しい感じがする。窮屈である。「お政は学問などという—・った事は虫が好かぬが」〈二葉亭・浮雲〉
- 恐縮して感謝する。「かくおはしましたる喜びを、又なき事に—・る」〈源・夕顔〉
- わびを言う。言いわけをする。「仏に—・り聞ゆるこそ苦しけれ」〈源・初音〉
- 謹慎する。「三所ながら—・らせ給へりしかば」〈大鏡・師輔〉 引用元: goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%95%8F%E3%81%BE%E3%82%8B/
「かしこまりました」は謹んで承るという意味から、敬意を表して礼儀正しく丁寧に依頼や指示を引き受けるという謙譲語であり、相手への高い敬意を表しています。「わかりました」の非常に丁寧な言い換え表現です。顧客や取引先に対して、より丁寧な対応が求められる場面で使用するのがおすすめです。また「かしこまる」は漢字で「畏まる」と書きますが、あまり読み書きする機会がなく見慣れない読みにくいということから、文字で書く場合は「かしこまりました」とひらがな表記にするのが一般的です。
■ 注意が必要な言い換え表現
「わかりました」の意味に似た言葉で、「了解」と「了承」がありますが、この2つの言葉は目上の人に使うことは避けたほうが良いです。
✖ 了解いたしました
✖ 了解しました
✖ 了承いたしました
✖ 了承しました
「○○いたしました 」と謙譲語にしたり、「○○しました」と丁寧語にする敬語表現は文法として間違っていませんが、「了解」と「了承」の意味に、目上の人に使用するにはふさわしくない意味が含まれていることから、目上の人に使うことは避けたほうが無難といわれています。
「了解」は、物事の内容や事情を理解して承認することという意味があります。「承認すること」が目下の人に許可を与えるということで目上の人に使う言葉ではないとされています。
「了承」は、相手の申し出や事情などを納得して承知することという意味があります。「了承しました」には「それでいいですよ」「いうとおりで構いませんよ」という意味合いになるため、目上の人が部下などに対して使うのが適切です。
「了解」も「了承」も、上司や取引先など目上の人に対して使う言葉としては不適切です。謙譲語や丁寧語の言葉にしても、相手によっては不快に感じられることもあるため、使用しないようにするのが無難です。「了解」と「了承」は、同僚や部下など立場が対等あるいは下の人に使う言葉ですので注意しましょう。
「わかりました」は、ビジネスシーンで使っても良い言葉なのかについて解説しました。相手との関係性や時と場合によりますが「わかりました」にはさまざまな敬語表現があります。
よく使う表現だからこそ、相手への敬意を忘れずに、スムーズに使い分けることができるようにしましょう。知らぬ間に相手に不快感を与えてしまうようなことがないように、それぞれの違いをしっかり覚え、相手や状況によって適切な言葉づかいを心がけましょう。